お知らせ内容
12月14日 第3アドベント礼拝メッセージより
2025年12月14日 待降節第3主日礼拝メッセージ「おめでとう、恵まれた方」より
牛田匡牧師
聖書 ルカによる福音書 1章 26-38、57-66節
今回のお話は、おとめマリアに天使によって妊娠が告げられる、「受胎告知」と呼ばれる場面でした。「マリアはヨセフと婚約していたが、一緒になる前に、聖霊によって身ごもっていることが分かった」(マタイ1:18)とも記されていますので、マリアは婚約中にヨセフ以外の子を妊娠してしまいました。性暴力は周囲から隠された見えない所で振るわれることが多く、また被害を受けた人も公にしないことも少なくありません。そもそも父権主義の古代ユダヤ社会では、女性の人権という考え自体がありませんでしたから、被害者であれ姦淫罪と見なされました。それでも女性は妊娠してしまうことがあります。そのような苦しい現実に、苦悩してきた女性たちは、いつの時代でも、どこの地域にも、数え切られないくらいにおられるのではないかと思います。そして少女マリアもそのような女性の一人だったのではないでしょうか。
ある日、マリアの所に見知らぬ人(天使)が来たので、マリアは驚きひどく戸惑いました。自分が性暴力を受けたことが公になったら、自分は姦淫罪で処刑されてしまうと恐れていたからでしょう。しかし、天使は「恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産む」(31)、「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを覆う」(35)と言いました。つまり、あなたは神の保護の中にある。別の言葉で言い換えれば、「あなたは決して汚れていない」ということです。そのような天使の言葉によって、マリアは自ら「お言葉どおり、この身になりますように」とその運命を受け入れていくように変えられていきました。希望が見出せないような真っ暗闇の中に、恐怖と不安でいっぱいになっている中に、神の使いはやってきます。ちっとも嬉しくない、決してありがたくない状況の中にこそ、「おめでとう。恵まれた方。神はあなたと共におられる」「いと高き方の力があなたを覆う」と告げてきます。だから、きっと大丈夫。「神様のみ心が、お言葉通りになりますように」と答えつつ、私たちもまた神によって遣わされている者(天使)として、隣にいる小さなマリアに「大丈夫ですか? 私も一緒に行きますよ」と声をかけられるようでありたいと思います。闇を照らすろうそくの火が、一本からもう一本へとその灯を分けていくように、神が共におられて、共に働かれていることを、私たちは確かに証していきます。





