お知らせ内容
8月28日 メッセージより
2022年8月28日メッセージ「あなたは何をしてほしいのか」より
牛田匡牧師
聖書 マルコによる福音書 10章46-52節
今回のお話は盲人の癒しの物語でした。当時の視覚障がい者は、ユダヤ人社会の中で、目が見えず労働できないというだけではなく、宗教的にケガレた存在として差別され排除されていた存在でした。その彼が、イエス様がすぐそばにいるということを知って、「私の苦しみを分かってください」と叫びました。周りにいた人々は彼を𠮟りつけましたが、それは単にうるさいというだけではなく、障がい者にはそもそも「発言権はない。律法違反。イエス様と会うにはふさわしくない」という当時の常識的判断に基づくものだったと思われます。ですが、彼は諦めませんでした。たとえ常識外れ、律法違反であったとしても、彼は叫び続けた結果、イエス様の前に連れて来られ、「何をしてほしいのか」と尋ねられ、彼はためらうことなく「再び見えるようになりたい」と答えました。周りの人からどう見られ、どう批判されようとも、そんなことは気にしない彼の心底からの願いに対して、イエス様は「行きなさい。あなたの信仰があなたを救った」と言われました。これは「あなたはあなたの人生を、これからも生きていきなさい。あなたの本心への信頼と、周りの人々への信頼によって起こしたその行動、生き方が、あなたを変えたのだ」という意味なのだと思います。旧来の社会の中で排除され孤立していた彼が、思い切って声を上げ、イエス様の前に進み出たことを通して、彼はまた新しい共同体との関係性の中に生きる者と変えられていきました。
「あなたは何をしてほしいのか/何がしたいのか」。簡単そうなこの問いに、私たちはどれだけ素直に答えているでしょうか。とりわけ、立場を重んじる日本社会では、「本心ではやりたくないけれど、立場上こうするしかない。悪いとは分かっているけど、やむを得ない」というようなことがよくあるのではないでしょうか。始められてしまった戦争が、なかなか止められないのも、「負けるわけにはいかない」という立場上の問題、メンツの問題なのかもしれません。「あなたは何をしてほしいのか」、この問いに素直に答えることができなくなる時、人間は自身の心を見失って暴走していってしまうのではないでしょうか。混乱と差別、様々な抑圧に満ちたこの世界に、平和を作り出していくために、私たち一人一人が自分自身の中に平安を作り出すこと。立場ではなく自分の本心に素直になること。それが地上に平和を作り出す、一歩になるのだと思います。