202３年１月15日メッセージ「一人では負いきれないけど、必ず隣有り」より

牛田匡牧師

聖書　出エジプト記　２章1３－27節

　今回の聖書は「出エジプト記」のお話でした。エジプトでの奴隷生活から、古代イスラエル人たちが神様によって脱出させられた物語ですが、それを率いたリーダーがモーセでした。その人数は聖書によると何十万人だったと記されていますが、それほどの多くの人々を前にして、モーセが一人で相談に乗り、裁判をし続けるのは不可能です。ですので、何人かずつ集まって組を作り、それぞれにリーダーを立て、それらを束ねて、縦に連なる組織を作っていきました。とはいえ、このようなお話は恐らく歴史的事実ではなかっただろうと考えられています。しかし仮に、実際の彼らの人数や組織がどれだけ少なく、小さかったとしても、彼らが「命の神によってエジプトでの困窮生活から救い出された」という自己理解を持っていたということに違いありません。

　このお話に何度も登場する「裁く」という言葉があります。この言葉は、必ずしも「白黒」決着をつける裁判だけを表わす言葉ではなかったようです。モーセより後の時代に、異民族の襲来に古代イスラエルの民を率いて戦った「士師」と呼ばれる指導者たちがいますが、その呼称も「裁く」という同じ言葉でした。つまり「裁き」という言葉は、常に「正義（抑圧からの解放）」を実現するように働くこととして、広い意味で理解するのがよいのではないかと思います。このお話を通して私たちに示されていることは、民の組織体制の確立や、裁判の効率化、ということではなく、むしろ一人では負いきれないような重荷、重責、課題であっても、そこには必ず助けてくれる仲間がいる、決して一人ではない、ということではないでしょうか。

　大震災などの時も、「もう駄目だ」「絶望しかない」という時にも、気が付くとそこには助けてくれようとする隣人の姿がありました。「必ず隣有り」、言葉を換えれば、「あなたは一人ではない、孤独ではない」ということです。何故、そのようなことが言えるのか。それは、私たち、神様から命を与えられ、生かされている全ての人々は、「インマヌエル（我らと共にいます神）」のイエス・キリストと共にいるからです。私たちは、今、この時も、命の神の中に生かされている者として、隣にいる弱く小さくされ、抑圧されている友たちの所へ、「あなたは一人ではない」「神様が共にいて下さる」ということを身をもって証しし、示し伝えるために、それぞれの場所、時、そしてやり方で、遣わされていきます。