お知らせ内容
2月26日 メッセージより
2023年2月26日 メッセージ「その実を食べたのなら……」より
岡嶋千宙伝道師
聖書 創世記 3章1-7節
最も「賢い」(創3:1)生き物でありながら、人間の女性を「だました」(13)ことによって、最も「呪われる」(14)こととなった蛇。人間世界に罪をもたらした悪者。だけど、蛇がもたらしたのは、罪だけではない。食べてはならない、と言われていた木の実を食べたことによって、人は「裸であることを知り」、エデンの園を追放される。人間を追放させるときに神が語る言葉(3:22)は、女性がその実に手を伸ばす前に、蛇が語ったこと(3:4)と全く同じ。その後、人間の男性アダムは、女性であり妻であるエバを「知り」、エバは「身ごもってカインを産んだ」(4:1)。古代イスラエルの人々にとって、神からの最大の祝福は「産めよ、増えよ、地に満ちよ」であった(例.創1:28)。蛇と神の言葉が全く同じであり、その言葉をきっかけに、人間の男女が互いを「知って」、子どもを産むことになったということは、蛇が語ったのは、人間の性についての真実、性を通してもたらされる神の祝福についての真実だったと言える。
蛇は「最も呪われ」た生き物であり続けている。真実を語ることによって嫌われる。蛇だけではない。人間の世界でも、性のことに限らず、自分自身に真実であり、その真実に生きようとして、一生懸命になりながらも、却ってそれが故に社会に拒まれ、生きにくさを抱える人たちがいる。女性。セクシュアルマイノリティ。家族を形成しない、子どもを持たないという選択をした人。外国籍の方。日本国籍を持ちながらも外国にルーツを持つ在日の韓国/朝鮮の人。薬物/アルコール/ギャンブルなどの依存症の方、HIV陽性者、障害を持った人、など。わたしたちは「社会常識ではこうだから」という理由で、また「聖書にこう書いているから」という理由で、自分自身を含め、誰かにレッテルを貼り、その人たちが真実に生きることをできにくくしてしまうことがある。そんなわたしたちのただ中に、イエスは人として生まれた。人と出会い、食事を共にされ、喜び、悲しみ、苦しみを隣人と共有し、徴税人、異邦人、漁師、女性、子どもなど出会った一人ひとりが、その人の真実に生きることを良しとされたイエス。わたしたち一人ひとりが、自分自身の真実に生きる。そして、真実に生きることに苦しさを感じている人の側にいて伴走する。隣にいる人の涙に目を向け、嗚咽の声に耳を傾け、心の叫びに身体を沿えるために、聖書の一つの記述、一つの読み、一つの解釈を優先させるのではく、新しく捉え直す。真実を伝えることによって、呪われ、忌み嫌われる生き物とされた蛇を、イエスは忘れていない。イエスの足跡とともに、蛇の跡をたどる時、一人ひとりが各々の真実に生きることを良しとする、神様の愛の痕跡を、見つけることができる。