お知らせ内容
7月2日 メッセージより
2023年7月2日 久宝教会 メッセージ「あなたと私をつなぐもの」より
牛田匡牧師
聖書 ルツ記 1章 1-22節
先日、国会で「性的指向及びジェンダー・アイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(LGBT理解増進法案)」が可決されました。「差別禁止法案」が「理解増進法」にすり替えられたということ自体が、根強い差別があることを示しています。また最新の日本のジェンダー・ギャップ指数は、146カ国中116位だった昨年よりも、さらに9ランクダウンの125位でした。これは「法整備がなされていないので、男女格差が埋まっていない」というよりも、むしろ「一人一人の中の差別意識が無くなっていない」そもそも「差別している自覚がない、自分の足が誰かの足を踏んでいることに気付いていない」ということを表しているのではないかと思います。
女性は男性の財産、所有物として扱われ、子どもを産むことが責務であり、婚姻関係のみが女性の生活や身分を保障するものと見なされていた文化的背景の中で、それらの道から外れ、女性だけで社会的に暮らして行くことが難しかった時代に、それぞれ夫や息子を亡くし、寡婦となった「姑」と「嫁」という立場の女性たちが、主体的に知恵と機転を用いて行動していく「ルツ記」の物語は、男性中心、家父長制主義の色濃い聖書の中でも珍しいものです。そして、そのルツの原動力となっていたものは、嫁という立場に基づく義務感や責任感ではなく、また小難しい思想や信条でもなく、もっと素朴に「相手のことを放っておけない」「大切したい」と思う気持ちだったのではないでしょうか。人と人、私たち一人一人をつなぎ合わせ、本当に力の出し合える関係にさせるものは、やはり心の底から自然と湧き上がってくる素直な気持ちなのではないかと思います。
人工知能やロボットがますます進化、進出してくるこれからの時代、自分の本当の気持ちを我慢して、ひたすら忍耐して取り組むことの価値はますます下がっていくと思います。無理やり取り組んでいても成果は上がりませんし、それでは疲れ知らずの人工知能やロボットたちに適うはずがありません。むしろ人間がなすべきことは、機械にはない気持ちや、心の部分にこそ目を向けること以外にはありません。理屈や義務感は、自分を守るために排他的になり、差別的になります。そうではなく、「それが好き」「大切にしたい」という心からの気持ちにこそ、自由で柔軟な発想やひらめきが生まれ、行き詰った時でも、諦めてしまわずに何とか力を出すことができて、結果的に道を見つけることができる。私たちの力や予測を越える形で、神様の不思議な力も共に働かれるのではないかと思います。